■サンオ級潜水艦
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満載排水量:水上275t、水中330t(排水量は、ジェーン年鑑基準。以下諸元は、Combat Fleet基準) |
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大きさ:34m(全長)×3.8m(全幅)×3.2m(喫水) |
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機関:ディーゼル・エンジン×1(300bhp推定) |
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最大速度:水中8kt、水上7kt |
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航続距離:水上航行時最小1,500海里(NKSF 98基準) |
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作戦可能日数:20日(NKSF 98基準) |
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武装:浸透用(偵察型)は武装なし(戦闘型は533mm魚雷発射管×4) |
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電子装備:手動式ソナーのみ装着されたものと推定 |
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乗務員:軍官5名、下戦士15名+追加15名輸送可能(NKSF 98基準) |
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原生産国:北朝鮮 |
サンオ級というClass
Nameは、米海軍情報局(ONI)で作った名称というだけで、北朝鮮の制式名称ではない。1995年1月、米海軍情報局(ONI)の資料公開により、初めてその存在が明らかになった。翌年の1996年9月、東海岸に浸透していた偵察局海上処所属のサンオ級潜水艦が韓国領海内で座礁する衝撃的な事件が発生した。この事件により、サンオ級に関する多くの細部資料が公開された。
サンオ級は、いかなる過程を経て開発されたのか?現在としては、正確な開発過程を知ることができないが、ジェーン年鑑96〜97年版は、サンオ級がユーゴスラビア製潜水艇を
逆設計して建造したものと推定している。ジェーン年鑑92〜93年版を見れば、北朝鮮は、大きさが概ね32〜34m程度の商業用潜水艇(Commercial Type Midger
Submarine)30余隻以上を保有していると出ていた。ここで言う34mという大きさは、1995年米海軍により公開されたサンオ級の全長34mと一致する。従って、少なくとも1990年代初盤から西側情報当局では、サンオ級の存在を既に
気付いていたことが分かる。
ジェーン年鑑92〜93年を参照してみれば、結局、90年代初盤に北朝鮮は、既に数十余隻のサンオ級を保有したという。『Guide to Combat Fleets
of the
World』2000〜2001年版は、北朝鮮のサンオ級が1991年から建造され始めたと紹介している。しかし、北朝鮮のサンオ級保有数量と北朝鮮の年鑑生産能力を比較してみれば、北朝鮮がサンオ級を初めて建造した時期は、1980年代後半まで遡る可能性もありそうである。
北朝鮮がサンオ級という潜水艦を保有している事実が公開されたのは、比較的近来のことである。このため、サンオ級の保有台数や諸元、性能に対しては、資料別に
偏差が甚だしい。1995年1月、米海軍情報局(ONI)は、2000年頃には、サンオ級が40余隻に達するものと推定した。しかし、2001年現在、サンオ級の保有数量は、
いくら余裕を見ても20隻内外のようである。各種資料を見れば、北朝鮮は、サンオ級を概ね17〜22隻程度保有しているようである。『Guide to Combat
Fleets of the World』2000〜2001年版は、1997年を最後に建造が終了したと紹介している。
Jane's Fighting Ship 96〜97 | Combat Fleet 98〜99 | NKSF 98 | WNT Ver 1.04 | |
水中満載排水量 | 330t | 325t | 350t | 277t |
喫水 | 3.7m | 3.2m | 3m | 3.7m |
乗務員 | 14 | 11(Crew) + 15(Sp) | 5(O)+15(E)+10(Sp) | 19 + 6(Swimmers) |
水中最高速度 | 4kt | 8kt | 8kt |
ジェーン年鑑96〜97年版は、乗務員を14名と紹介している。この数値は、恐らく、96年9月のサンオ級浸透事件以前に米情報当局(恐らくONI)が推定した数値のようである。『Guide
to Combat Fleets of the
World』98〜99年版が提示した「乗務員11名+特殊部隊要員15名」という数値は、96年9月の偵察局所属サンオ級浸透事件当時の実際の搭乗者数と同じである。BurmudezのNKSF
98では、「将校5名+乗務員15名+追加輸送可能人員10名」という数値を提示している。これは、サンオ級浸透事件当時の唯一の生存者である李グァンスとのインタビュー結果を追加的に参照した数値のようである。
98年のサンオ級浸透事件当時には、偵察局海上処長と副処長が搭乗する等、多少異例的な要素が多かったことから、このときの搭乗人員は、通常的な場合と見るのは難しいだろう。従って、偵察型(浸透用)サンオ級の場合、将校5名+乗務員15名が通常的な搭乗人員で、ここに追加で特殊部隊要員を搭乗させる場合、その人員は、最大5〜10名程度となるだろう。基本型(戦闘用)サンオ級の場合、当然将校5名+乗務員15名が搭乗するだろう。
水中最高速度の場合、ジェーン年鑑96〜97年版が4ktという数値を提示したが、この数値は、サンオ級浸透事件以前の単純な推定値と考えられる。従って、最近NI系列資料が提示する8ktがより正確なようである。NKSF
98は、サンオ級の水上通常速度(Economical Speed)を2.5kt、水中通常速度を3ktと紹介している。
96年9月、韓国領海に浸透していた偵察型(浸透用:Reconaissance
Version)サンオ級潜水艦には、魚雷発射管がなかった。しかし、基本型(戦闘用:Combat
Version)には、533mm魚雷発射管4基が装着されたものと知られている。『Guide to Combat Fleets of the
World』は、基本型の場合、533mm魚雷発射管4基が装着されているが、魚雷再装填(Reload)は、不可能なものと紹介している。これは、基本搭載量が4発ということを意味するのだろう。
上の図面は、日本の小学館から発行した『北朝鮮解体新書』と『金正日大図鑑』に出ている図面を若干修正したものである。図面中に機関室と乗務員室の間の空間では、自動小銃のような武器が発見された。この部屋に対して、金正日大図鑑では、「兵器
兵装室」と紹介しており、国家情報院ホームページの参考図には、「武器庫」と出ている。米海軍ONIのサンオ級図面には、武器庫に該当する空間をただ「Crew's Quarters(乗務員室)
」と紹介している。
乗務員室の写真を見れば、ハッチ越しにまた別の部屋が見えるだろう。この部屋が正に特殊部隊要員の作戦準備室である。作戦準備室の床に微かに水中出入口が見えるだろう。96年9月、浸透していたサンオ級の左右両側面外部に機雷や貨物輸送用キャニスター(Canister)を固定できる
備品(Fixture) 16個が確認された(Fixtureは、下の写真参照)。
サンオ級には、計3ヶ所の出入口がある。潜水艦司令塔(潜橋)右側面に設置された出入口が主出入口である。武器庫天井にある出入口は、非常脱出口である。作戦準備室 の床から潜水艦右舷に傾いて下側に抜けた出入口は、特殊部隊要員が浸透するときに使用する出入口である。潜水艦船体右側にあるハッチは、韓国政府が展示のため新たに設置したハッチで、元来あった出入ハッチはではない。現在、サンオ級潜水艦は、江原道江陵市安仁津里海岸にチョンブク艦と一緒に展示されている。
最終更新日:2003/05/25